ここで、thatの用法について少しまとめてみたいと思います。文法構造が分からないと正しく訳せない場合もありますので、教科書的に文法上の役割別にみていきます。
例文は、アガサ・クリスティの小説から取っています。採取にはインターネット上のコーパスを利用しました。
関係代名詞
名詞を後ろから説明するパターンです。
Is this the key that was lost?
これがなくなった鍵ですか?
Thatの前が名詞ですから、関係代名詞か、同格かを考えます。Thatの後はwasという動詞になっています。こういう場合はほぼ関係代名詞に決まりです。Headのthe keyは、wasの主語に当たります。
He drew from his pocket the key that he had found in the lock of the despatch-case upstairs.
彼は2階の書類箱の鍵穴で見つけた鍵をポケットから取り出した。
これもthatの前は名詞ですから、関係代名詞か同格かを考えます。Thatの次にhe had foundと続きます。ここで、foundという動詞を見ると、後ろに裸の名詞がありません。そこで、thatの前のthe keyがもともとfoundの後ろにあったと考えると、「鍵を見つけた」という文が成立します。よってこのthatは関係代名詞で、「見つけた鍵」と訳せばよいことになります。
同格
関係代名詞と同じく、名詞を後ろから説明します。
In the same way, we have his statement that he put the coffee down in the hall.
同じように、我々は彼がホールにコーヒーを置いたという証言を得ている。
Thatの前が名詞なので、関係代名詞か同格かを考えますが、thatの後に出てくるputという動詞は、heという動作主と、the coffeeという対象物を持っている上に、his statementとのつながりはありませんから、同格になります。 関係代名詞と同格の違いは、thatの前の名詞が、thatの後の動詞の後ろに来るべきかどうかで分かれます。名詞の後ろに来るto不定詞の場合も似たようなことがありました。こういったことを並行的に捉えられるようになると英語の仕組みがより見えてくるでしょう。
名詞節
thatで導かれる節が裸の名詞と同じ働きをするものです。
You did not understand that he believed Mademoiselle Cynthia guilty of the crime?
あなたは、彼がマドモワゼル・シンシアが犯罪を犯したと信じていたことが分かりませんでしたか?
that節が、動詞understandの項になっています。「~ということ」を表す名詞節になります。
ちなみにthat節の中は、He believed Mademoiselle Cynthia guilty of the crime.となります。定動詞の後ろに裸の名詞と形容詞が来るパターンです。このbelieveは、that節を項として持つことができますので、He believed that Mademoiselle Cynthia was guilty of the crime.という表現も可能です。ただしそうなるとthat節の中にthat節という構造になってしまうため、分かりにくくなってしまうでしょう。
I could see by the expression of his face that he fully appreciated the difficulty of the position.
私は彼の表情から、彼が難しい立場に置かれているのを有り難がっていると分かった。
ここでは、thatの前がhis faceとなっているので、関係代名詞、もしくは同格と考えてしまいたいのですが、実はよく見るとby the expression of his faceは括弧にくくることができ、seeに対象物の項がないことから、thatがseeの項になっていることが分かります。これは、「~ということ」を 表す名詞節です。
形容詞の理由説明
I think every one was a little surprised that it should be he and not one of the official detectives who took the initiative.
主導権を握っているのが、警察の者ではなく彼であることに、みんな少し驚いたように思う。
例文が少し難しくて恐縮です。「驚いた」(ちなみにこれも<物→人>動詞です)理由の説明がthat以下でされるのですが、そのthatの中身がさらに強調構文になっています。この文では、その強調構文の部分はthatではなくwhoが使われています。
so-that構文
We must be so intelligent that he does not suspect us of being intelligent at all.
私たちは、私たちが賢いと彼がまったく疑わないくらい、賢くなくてはならない。
前の「形容詞の理由説明」のthatと同じと考えてもよいと思うのですが、so-that構文というのはよく出てきますので、あげておきました。この例文くらいsoとthatが近ければ、見分けるのは難しくないかと思います。
It seems 形容詞 thatの構文
It seems to me quite likely that he entrusted the papers to this girl.
彼が書類をこの少女に預けたことは、きわめてあり得ると私には思える。
この構文は、that以下の部分が形容詞のようだ、という意味になります。最初のitが仮主語で、その中身がthat以下という説明になると思いますが、この構文の形で覚えてしまった方が早いのではないでしょうか。このようなseemを使った構文については、あらためて取り上げたいと思います。→seemを使った構文




