他動性の低い他動詞

 一般に、「一方の行為が他方に及び、他方に変化をもたらす」性質を「他動性」とよび、文法的に「他動詞」とされるものは他動性の高い動詞です。しかし、英語には、文法的には他動詞(いわゆる裸の名詞を目的語としてとるもの)でも、他動性が低い動詞が多くあります。そのような動詞は自動詞と間違えやすく、目的語となる語の前に前置詞を入れたくなってしまいます。そのような英語の他動詞として、以下のようなものがあげられます。

accompany, address, answer, approach, attend, discuss, enter, face, follow, leave, marry, match, mention, obey, oppose, reach, resemble, suit, visit, etc.

 enterやreachのように移動を表すものは、toを入れたくなってしまうでしょう。また、resembleやmatchなど、関係を表すようなものには、withを使いたくなるかもしれません。discussやmentionにはaboutあたりをつけたくなる気持ちも分かります。しかし、これらの動詞は英語では裸の名詞を後に持つことができる他動詞です。

 先に述べた通り、日本語の他動詞は一般に助詞「ヲ」をとります。そのため、日本語で「ヲ」をとらない動詞に対応する英語の動詞を、他動詞としてイメージすることが難しくなってしまうようです。英語は日本語を置き換えたものではないということを確認する必要があるでしょう。

 自動詞についても簡単に見ておきたいと思います。

自動詞にも他動詞にもなる動詞

以下は以前に紹介した例文です。

1a. 花瓶が割れた。(自動詞文)
1b. 花瓶を割った。(他動詞文)

2a. The vase broke. (自動詞文)
2b. Tom broke the vase. (他動詞文)

日本語では、自動詞と他動詞が違う形になっていますが、英語では同じ形が自動詞としても他動詞としても使われていることが分かると思います。このような動詞を「能格動詞」とよぶそうです。

英語の主な能格動詞として、以下のような語があげられます。

break, burn, close, decrease, diminish, drop, dry, grow, increase, move, open, shake, shut, split, spread, stop, turn

それぞれで自動詞文と他動詞文を作って確認してみてください。なお、このような能格動詞は変化を表す語が多いといわれます。

自動詞文:(物が)変化する
他動詞文:(人が)(物を)変化させる

これらの動詞が関係節の中で使われたり、分詞やto不定詞の形で使われたとき、後ろに裸の名詞をとるかとらないかという違いが問題になってきますので、気をつけておきましょう。

自動詞と他動詞

 日本語話者であれば、次の文のカッコの中にどんな助詞を入れるか、迷うことはないと思います。

1a. 花瓶( )割れた。
1b. 花瓶( )割った。

 ここでは、「割れる」と「割る」というよく似た動詞が出てきますが、「割れる」は物自体の変化を表わす動詞、「割る」は物に働きかけて変化させることを表す動詞です。後者で表される、「一方の行為が他方に及び変化を起こさせる」ことを「他動性」と呼びます。他動性にもいろいろな程度がありますが、他動性を持ち、形式的に同じような振る舞いをする動詞をまとめて「他動詞」と呼びます。それ以外の動詞を自動詞といいます。

 日本語の「割る」は他動性を持ち、「AがPを割る」という構文をとります(「ガ格とヲ格をとる」という言い方をします)。日本語では他動性を持つ動詞はヲ格をとるものが多く、その点で形式的に他動詞を判別することがほとんどです(これだけだと言葉足らずですが、詳しくやりだすとキリがないので、今は曖昧なままにしておきます)。そして日本語では、「割れる」と「割る」のように、たいていは自動詞と他動詞が異なる形で現れます。

 英語ではどうでしょう。

 まず、他動性を持つ動詞は、英語ではたいてい直接目的語をとります。要は、前置詞なしで動詞の後に名詞を持ってくることができるのです。そこで英語では、形式的に、直接目的語をとる動詞を他動詞と呼びます。直接目的語をとっても、他動性の低い他動詞はあります。それについては、別途触れたいと思います。

 さて、英語では上記1a, 1bの内容が以下のように表されます。日本語では1bのような他動詞文でも動作主を表さずに言えますが、英語はそうできないので、仮にTomが割ったことにしておきます。

2a. The vase broke.
2b. Tom broke the vase.

 動詞が同じ形で自動詞としても他動詞としても使われていることが分かると思います。

3a. Tom woke up.
3b. Tom woke me up.

 3ではwakeという動詞の過去形が使われていますが、3aは「トムは起きた」、3bは「トムは私を起こした」となります。同じ形の動詞が使われていても、目的語が入るかどうかで意味が変わるということです。このような自動詞にも他動詞にもなる動詞についても別途まとめてみます。