主語という概念について

 英語に限らず、言語を学んだり教えたりする際、どうしても避けて通れない用語が、「主語」です。

 ところが、この「主語」という言葉が非常に厄介です。文字通りの意味からいえば「主要な語」ということでしょうから、文の中の主要な語はすべて主語といえるでしょう(よく「お前の話には主語がない」という時の主語は、この意味で使われていると思います)。しかし、言語を学ぶ際の主語は、もう少し狭い意味になります。

 多くの場合、主格とよばれる形で現れるものが主語とされます。英語なら「I, we, he, she」などは主格としてしか使われないので、これらは自動的に主語となります。多くの場合、主格で現れる名詞が、述語となる動詞と一致します(このように主語によって形が決まる動詞は定動詞といわれます)。英語でやっかいなのは、代名詞以外は名詞の格変化がありません(「やっかい」と書きましたが、実際はその方が楽で、格変化を起こす言語の方が勉強する上ではやっかいかもしれません)。

 英語の場合、名詞の格変化はなくても、主語と定動詞との一致は起きます。そこで、定動詞と一致する語が主語である、と一応はいえます。ただし、定動詞について補足でも述べるように、定動詞の変化もそれほどありません。最終的に英語では、「倒置が起きない限り、(このサイトでいう)述語動詞句の前にくるのが主語」と、語順で判断することになります。

 

定動詞について補足

 定動詞が主語の人称・数や時制などによって形が定まる動詞であることは間違いないのですが、英語の場合、be動詞を除くと、人称や数による動詞の形の変化はそれほど顕著ではありません。ラテン語は、動詞の形を見れば主語の人称と数が分かるため、主語を明示する必要はないのですが、そうはいかないのが英語です。

 そこで、英語の場合は、主語によって動詞の形が定まるというよりも、動詞の形の変化が少ないため、明示的な主語と動詞をセットにせざるを得ないのだ、という説明も見受けられます。確かに筋の通った話です。

 では、その主語とセットになった動詞を何と呼ぶかとなると、やはり定動詞と呼ぶのが自然かと思います。

ラテン語英語
主語の人称・数による動詞の変化が顕著主語の人称・数による動詞の変化は少ない
→主語を明示する必要がない→主語を明示する必要がある
明示的な主語なしでも成り立つ定動詞明示的な主語とセットになった定動詞

述語動詞句について

 英語で「動詞」といった場合、いわゆる1つの文を形成するのに必要な動詞と、そうでない動詞とが混同されてしまうことが多くあります。文を形成するのに必要な動詞のことを、定動詞とよばれることもあります。定動詞とは、主語の人称・数や時制などによって、形が「定」まる「動詞」です(「形が一定」という意味ではなく、むしろ逆なので注意が必要です)。つまり、定動詞は必ず「主語」を必要とします。英語の場合、その「主語」が明示的に必須となります。この点が、英語における主語の特異性を物語っています(定動詞について補足したページもご参照ください)。

 文を形成するのに必要な定動詞ですが、ここでは、定動詞を含む、述語となる動詞のまとまりを、主語名詞句に対して「述語動詞句」とよぶことにしています。一つの文には、必ず主語名詞句と述語動詞句があるのです。述語動詞句を見つけることが、文を理解するのに大事であることを知っていただきたいと思います。

 ちなみに、英文法でよく出てくる「節」とは何か、という説明で、「S+Vの形を持つもの」といわれますが、要は述語動詞句を含むものを言います。だから、述語動詞句を理解しなければ、節も理解できないことになります。述語動詞を見分けることの大切さは、今後の説明の中でもくり返し触れていきたいと思います。

 述語動詞句の中心は動詞です。英語における動詞の性質を理解することが次に重要になります。動詞は、「後ろに何を持つか」という点がポイントです。

 述語動詞句の形については、次にまとめています。→述語動詞句の形1述語動詞句の形2